君の名は。

先週末、噂になってた新海誠監督の『君の名は。』を見てきました。
昼過ぎ(14時過ぎ)の回で見ようと思って1時間ほど前に行ったんですが、
予想が甘かったというかなんというか…ついた時点で席ありませんでしたね!
良く考えてみるとまだ公開から2週目(かな?)だったっぽくて。
その上でこれだけ評判が良い、とくればさもありなん…。

という訳でそんな中見て来たわけなんですが。
とりあえず先に客層の雰囲気ですが、正直かなりのカップル数だったんですよね。
もちろん俺らみたいないわゆるアニメ層というのもかなりの人数居たと思いますが、
それを考えてもカップルや普段アニメ映画ってジブリとかしか見ないよ?
って言う感じの層もかなりの人数来てたんじゃないかなーって感じでしたね。
下は女子中学生のグループ、って感じでかなり幅広く評判になってるというか。
むしろ男、おっさんと言っても良い年齢の2人組で大丈夫かこれ…?
みたいなね…でもこれだけは言わせてくれ! むしろ俺達のフィールドなんだ!

さて、まあそんな話はさておき。
実はそれほど期待して行ったという訳ではなかったんですよね、元々は。
と言うのもなんていうのかな、いつからかジブリに随分寄せてる面が結構ある。
と感じてて…まあ別にそれが悪い事ではないんですが、ヲタ寄りなのか良く判らない。
もちろんオタっぽくないとダメとか、そういう事が言いたいわけではないんですが、
やっぱりそうは言ってもアニメじゃないですか、アニメ映画。
なのでガッチガチに作られてる恋愛映画比べるとどうなのかなぁ、とか。
そういう感覚がどうしても(自分の中にね)残ってる感じはあったんですよね。
まあ、見た結論から言うと、別段それを比べる必要もないよね。
面白い(良い)ものは別に媒体がどうあれ面白い(良い)よね。
って感じだったんですが…。

まーとにかく全編通して綺麗でした。
逆に綺麗すぎてなんていうのかな、出来の良い工芸品みたいな感じで。
新海誠監督の作品がグラフィックに拘ってる、寄ってるってのはあるんですが、
それはもう単純に前提として、ストーリーや設定、雰囲気まで含めて綺麗。
なんていうか綺麗、と言う単語で表現するしかないのかな、と言う感じでした。

やっぱり特にグラフィックには熱を感じますよね。
昨今多いのが、いわゆるロケハンして来た背景を元にそれを精巧にアニメに再現する。
って言う手法なんですが、この作品はもちろんそういったベースもあるんだと思いますが、
その上に新海誠と言う人間の描く想像上の背景(とか)が混じってるように感じられて。
でもおそらくこんな場所はないんだろうな、って思うんだけど現実的にありそうな。
そういう上手く現実と非現実を融合して現実に落とし込めてるような。
そういう雰囲気が凄く丁寧に、綺麗に表現されてるんですよね。
いわゆる聖地…っていうのがあるのかないのか本当にそれが重要ではない。
空想上の背景場所でもあたかも本当にあるのかもしれない。
そう言った境界線をゆらゆらと揺れる部分がとても大きかったかな、と。

それを特に良く表現してるのがメイン2人の土地柄。
方や都会、東京の雑踏やビル群、電車や人が作り上げた様々なものたち。
方や田舎、自然が濃く残ってて、旧態然とした家屋や山林、そして聖域。
都会の方は本当にそういう場所があるからこそ精巧なんだろうなと思えて、
田舎の方は(隕石跡地も含めて)ないんだろうけどあるような気がする。
その2つの場所場面が度々交錯するからこそ、どちらも現実的で非現実的な。
つまりその境目を悟らせることなく、繋げてたのかな、と言う感じでした。

まー本当に、そういう映像の部分は見て貰えれば判るかなと。
ただやっぱりジブリとは違うんですよね、ジブリは幻想的な面がとても強くて。
新海誠監督の作品って言うのはむしろ現実的な綺麗さを描いてるんですよね。

で、話の方…ストーリーに関してですが。
うーん…まあ正直男2人で見る映画ではなかったかなという感じでしたね!
ぶっちゃけると見た後なんていうか死にたくなる…そんな感じでしたよね!
多分何万回生まれ変わっても、俺はこんな出会いはないんだろうな、みたいな。
そういう事を突き付けられる、そんなストーリーになってるんですよ…。
もちろん現実的に考えるなら2人の入れ替わりなんかは完全にSFの世界なわけで。
そんな事そりゃー何万回生まれ変わったってあるわけないだろ!
ってのはその通りなんですけど…そういう事ではないんですよね。
あれほど熱く、濃く、強く想えるのかどうか…その綺麗さ、純粋さって事です。

でも面白かったです。
入れ替わりと言う摩訶不思議な現象が起きててお互いがお互いの体を使うギャグっぽさと。
中盤から少しずつじわじわっと何かが押し寄せてくる、と言う感覚のバランスが良くて。
特に今回は入れ替わりの舞台が東京と田舎、と言う全く環境の違うものにする事で、
見てる側に”同じ時間軸”だとミスリードしてあるのは面白かったですよね。
2人とも同じ時間に生きててその中で入れ替わってるだけだと思ってる。
でも実は3年分お互いの時間はズレてる…と言う所がストーリーの妙でした。
そういう意味で実はいわゆるタイムトリップものなんだけど、それを悟らせない。
そういう仕掛けを施した作品でした。
都会側も田舎側も、そこだけ切り取ると同じ時間軸に見える。
って言う事なんですよね、上の方でも少し触れましたけど。
同じ場所が舞台だったとしたらやっぱりズレが出るわけですしね。
それを都会と田舎、と言う2つの舞台にする事で違和感を消したと言うか。
その田舎の側を神秘的なものにする事で成立させてる、と言う感じだったかなと。

そこからはタイムトリップと言うか、未来を変える為の物語になるんですけどね。
実は3年前に三葉は隕石の落下に巻き込まれて死んでる事を瀧が知って。
でも今この時、3年前の隕石が落下する前の時間の三葉と入れ替る事が出来る。
だったらその記憶と三葉の体を使って落ちる隕石の災害から三葉を救い出そう。
その辺はいわゆる未来を変える物語には必須の展開と言うヤツでしたけどね。

それとこの作品、無駄なシーンってのがほとんどなかったと思います。
序盤にある日常を表現する授業を受けているシーンとか。
教師が黄昏時、逢魔が時を説明した理由や口噛み酒の必要性、とか。
他にもばーちゃんの先祖代々の説明としての”結び”の意味の解説、とか。
単なる日常の一コマとして描写されてるそれらが、実はとても重要なポイントで。
口噛み酒なんかは序盤、三葉が田舎の因習のようなものを毛嫌いする、
その一つの要因として存在するだけなのかなと最初は思ってましたけどね。
最後、その口噛み酒が、ばーちゃんの”結び”と言う言い伝えと相まって、
瀧をまたもう一度過去に結びつける…そして黄昏時にお互いの時間が交じり合う。
そこまでの流れの綺麗さ、と言うのは息を呑むぐらいでした。
逆に言うとすべてがその為に準備されてるともとれるわけですが。

後最後のシーンね。
三葉を救い出したその後…何年後かに東京で2人が出会うシーン。
そこでお互いに「君の名は」と聞く所でこの作品は終わるんですけど…。
やっと、本当にやっと生身の姿で出会い、名前を忘れていてもこの人だと判る。
なんていうのかなぁ、その魂レベルでの結びって言うものといえば良いのかな。
そりゃそんなもの、現実的に考えたらあるわけないよって思っちゃうんだけど。
それでもあそこで「君の名は」と出て来た2人のお互いの結びつき、確信。
なんていうかほんと、あのシーンに関しては言葉に出来ない美しさがありましたね。

と、まあストーリーに関してもとても良く出来てたと思います。
正直設定なんかの粗を探そうと思えばそれなりにいくつも思い浮かぶ所はありますが…。
例えば時間のズレ、というのが今回の作品のポイントの一つなんですが、
瀧と三葉ってお互いスマホのスケジュール帳で入れ替わった時のやり取りしてて。
でも普通スマホのスケジュール帳って使ってたら西暦とか判りますよね。
ノートでやり取りする、って言うレベルならそりゃ判らないかもしれませんけど。
他にも隕石落下があれだけの局地的な災害だけでとどまるもんなのか、とか。
記憶が消える理由とか…ああ、後三葉は初日どうやって家に帰ったのか、とか。
いやだって、名前も判らないまま都会の電車に乗って学校に行ったわけですよね。
帰りの住所なんかあんなにバタバタと出た状況で覚えてるとは思えないですよね…。
みたいなのはあるんですが、そういう部分は気にしても始まらないというか。
そういう部分を気にする作品ではない、という事だけは明記しておきます。

ああ、後これも大事なことだと思いますが。
メイン2人のキャスティング…神木&上白石という声優ではないお二人でしたが。
なんだろうな、宮崎監督が声優をあまり使いたがらない理由が何となく判りました。
声優さんってやっぱりどうしても役を作る上において”強い”んだろうな、と。
なんて言えば良いのかな…例えばこの瀧と三葉というキャラのたどたどしさとか。
そういったものをナチュラルに、演技臭くなく伝えられると言うか。
うーん…難しいけどそんな感じなのかな、というのは良く伝わってきました。
上手いか下手か…という二元論の問題ではなくてなんていうのかなぁ。
声優さんたちほど上手くないけど、瀧と三葉がもつたどたどしい感じ。
多分言葉にするのは難しいんですけど、それが欲しいという事なのかな、と。

ただし、それはすべてそうであれば良いという訳ではなく。
例えば今回ならサブキャラとして声優さんがしっかりと締めた演技をされてて。
しっかりバランスを取ってるからこそ、と言うのはあるんじゃないかと思いますけど。

という訳で長くなりましたが、一本の作品としてとても綺麗でした。
ただ、とても綺麗すぎて眩しすぎる部分もあるよなぁ、と見てて思いましたけどね。
でもそれは作品というものなので、そのぐらいであるべきなのかもしれないですし。
綺麗すぎて合わない、という人もやっぱり多々居るんじゃないかなとは思います。
それでもまあやっぱり綺麗なものは綺麗だよな、という事で。
とりあえず見に行って良かった作品だったかな、と感じました。

あ、後中学生? 高校生? になった四葉可愛かったですね。
三葉自体そもそも可愛いんですが…まあふたりとも可愛いですよねうん。

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