サクラダリセット CAT, GHOST and REVOLUTION SUNDAY。

サクラダリセット CAT, GHOST and REVOLUTION SUNDAY 著:河野裕

サクラダリセット CAT, GHOST and REVOLUTION SUNDAY (角川スニーカー文庫)

世界を3日分リセットできる少女と、リセットした前の記憶を保持できる少年。
その二人が能力者が集まる町、咲良田で起こる事件を解決していく物語。
設定的には割と良く見かけるもの、って言う感じがする作品ではあるけど。
中々上手く魅せてたんじゃないかな、と思う一作だった。
表紙の春埼が可愛いのが個人的にはグッド。

名前は前から色んな所で聞いてたから知ってたけど、
読んでみたら結構好みな文体、好みなストーリーだったので良かった。
上記したけど、基本的な設定はどこかで見た事があるものが結構あって、
世界を3日分リセットする力含めて、能力モノって感じの設定ではあった。
ただ、ヒロイン(美空)の3日分リセットする能力と、主人公(ケイ)の記憶する能力。
ここらへんを上手く使って、物語を綺麗に魅せてたなーっていう感じだったかな。

ただ、中盤では意味が判らない情報も多い。
伏線、と言うほど伏してないような情報っていうのが凄く多かった気がする。
例えば作中で噂になってるって所からスタートする、穴が開く壁とか。
あれも結局、推理したからわかる様な情報ではなかったんじゃないかな。
そういう意味じゃ、推理しながら読む作品にはあんまり向いてない。
ま、元が能力ものだから突飛な仕掛け、解決があってもおかしくはないし。
そういう部分を前提として理解して読むのが正しいと思うんだけどね。

ケイがちょっと醒めてるようで厨二っぽいのが悪くない。
何ていうのかな、悟ってるんだけどそれ以上に厨二っぽい部分があると言うか。
必死にその厨二っぽい部分を押し込んでるような、そんな感じの主人公。
基本的に頭が回ってそれを使って何もかもを解決するタイプ。
能力対決だとほとんど知恵(もしくは自分が使えるもの)で解決する感じっぽい。

んでヒロインは無口系で、従順系。
でもちょっとした所の自我と、その自我で迷ってるのが可愛い感じだったかな。
まー物語的にどうも割を食いそうなヒロイン、って言う感じがするんだけどなー。
そういうのをある程度自分で理解してる、ってのが読んでてまだ救いだったかも。
最終的にケイが過去の事柄にきちんとした決着をつけないと、
美空とケイがくっつく事はないなぁ、ってのは読んでて理解できる。
その辺をどちらも理解して接してるってのが救いでもあり、切なくもあり。

とにかく全体的に淡い感じだった。
もの凄く強い感情、って言うのがこの作品にはまだ出てこなくて。
強いて言えば今回の事件のきっかけになった村瀬の感情、ぐらいだけど。
それもケイを殺す事を躊躇って、自分がした事で泣き崩れる程度だからね。
そういう意味で言えば、全体的にゆっくりとした感じだった。
ただ、そういった感情が今回の事件にはそれほど出てこないだけで、
ケイが自分の中で誓ってる部分、過去の自分達の事の部分。
そこに凄く激しい、でも外には出せない感情があることも描いてたな。

なので基本的には村瀬が持ってきた事件のストーリーだけど、
そういった過去の部分も各所に散りばめられた感じだった。
ただ、そういった部分はあくまでもアクセントでしかなくて、
今回の作品は今回の作品の中できちんと綺麗に完結してたな。
そういった部分を使ったストーリーも今後展開していくだろうから、
そういう部分は2作目以降に十分期待が持てる、そんな感じではあった。

ただこれ、ケイは3日分巻き戻す事で一つでも悪い事を回避できたら…。
って考えで3日間を巻き戻して、依頼を解決してるって感じなんだろうけど。
巻き戻した結果、クラスメイトの未来が死んだ様に、
どこかしら伝播が伝播して人が不幸になってる可能性はあるんだよね。
だからこそケイは基本的には巻き戻す前と同じ会話、行動を心がけてる。
ってのは判るんだけど、もし一つでも違う行動を取ったらそこから波及するもの。
って言うのは正直ケイの手に負えるものではないだろう、って感じだよね。
要するにこの物語の核になる部分って基本的にケイのエゴでしかなくて。
猫を助ければ、目の前の依頼人が不幸にならない”かもしれない”というだけ。
それをひたすら繰り返していく、そういう物語でもあるんじゃないかなぁ、と。

だからまあ、2巻以降そういったケイのエゴイズム。
それらがどう解釈されていくのかって言うのも楽しみにしておきたいところ。
作中では恐らく、自身のエゴで変わってしまう未来があるということ。
それはケイ自身が一番良く知ってるんじゃないか、ってのは判るんだけどね。
その割にはリセットして未来が変わる事自体に恐れがないと言うか…。

でも美空が可愛かったので何でも良いです。
感情がないとか薄いとかいいながら、浴衣のアイロンがけを気にしたり。
ケイに合う為に髪留めの色をどうしようこうしようと悩んだりとか。
思った以上に繊細で、可愛い性格のヒロインだったので俺は満足。
惜しむらくはそれが成就する未来が今の所見えないところだけど…。
正直、何時までも過去を引き摺ってるケイの方が悪いと思うしね、これは。
それを美空がこれからどうやって崩していくかって事が大事なんだと思う。
まあ、恐らくそれを美空自身が、美空主導でやるとは思えないけど。

なんにしても世界観が割と良かったので。
気が向いたら2作目、3作目を読んでみようかなーと思える出来でした。
若干、本当にこのエピソードは今必要なのか?
って部分があるにはあるんですが、まあその辺は今後の為。
そういう可能性があると考えたら別に不満があるわけでもないので。
今必要なければ、さらっと読んで流しておくのがいいかなーって感じですかね。
それ以外はケイ視点、美空視点と分かれたりするのも別に不満は無いし。
全体的に面白い作品だったんじゃないかなーと。

カテゴリー: 小説系 タグ: , , , , , パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

This blog is kept spam free by WP-SpamFree.