ヴィンランド・サガ 11。

ヴィンランド・サガ (11) 著:幸村誠

ヴィンランド・サガ(11) (アフタヌーンKC)

ヴィンランド・サガ11巻、表紙は精悍な顔つきのクヌート。
もはや一瞬ではこれが誰なのか判らないぐらいに顔つきが変わってるのが印象的。
実際に作中でも、随分と(良かれ悪かれ)成長した姿を見る事が出来るけど。
やっぱり、個人的には昔のクヌートの方が好きだな、ってのは…まあ言うまいか。

前半はクヌートと、その兄ハラルドとの対話から。
王冠の呪いはともかく、王は二人要らない…まあ正しい理論ではあるよな。
たとえどれだけ仲が良かろうと、頂点が争う事になる…というのは歴史の必然。
当人同士がどうあれ、その家臣、回り、状勢…つまり戦わざるを得ない。
争わざるを得ない、という事はやはり多々ある…という事なんだろう。
だからこそ先手を取って、ハラルドを…というのがこの巻の前半部分だった。
クヌートはもう、スヴェンを殺した時点で手段を選ばなくなった…という。
非情な部分が描かれてて、読んでて心が少し痛くなる話だったな…。

それに王冠の呪いもある。
結局の所、こうして頂点に立ち続けるという事を選ばなければいけない。
という事、それ自体がやはり王冠の呪い…と、取れる感じだったな。
その為には私を殺し、他を殺し、全てを従属させなければならない。
その一手目がやはり、ここではハラルドを消してしまうという事。
ただ、前王スヴェンの幻影を見てしまってるという部分。
そこにクヌートの後悔や、決意が見て取れると言えなくもないな…。

中盤は場面が変わってトルフィンとエイナルの農場のシーンに。
ついに森を伐採しきった二人、それに三年と言う月日がかかったという事。
更に次の収穫で奴隷と言う身分から二人が解放されるという事。
奴隷編になってから長かったのか、短かったのか…難しい所だけど。
今回のトルフィンとエイナルの笑顔、ってのは中々良かったと思うよ。
戦う事から、森を拓き畑を作り麦を育てる事に喜びを見出す、そんな笑顔と言うか。
今までトルフィンが子供の頃にしか持ち得なかった、そんな笑顔と言うか。

それに加えて、新しい波乱が起きそうな雰囲気なのもいいね。
主人を殺し、自由をただただ力で手に入れた奴隷が向かう先はどこなのか。
果たして誰を迎えに行くと言うのか…非情に気になる展開で締められてたな。

後大旦那の所のシーンは中々良いと思う。
この大旦那と蛇、それに加えてトルフィンとエイナルとアルネイズ。
って言う妙な組み合わせ…なのに和気藹々としてるのが良いよね。
大旦那は自分に構うな、って言うスタンスを一貫してるのに、
蛇は無視して大旦那の所に居るってのが何となく良いというか。
ただ…まあ蛇がどういう考えでそこに居るのかってのは判らんのだけどね。
ただ、大旦那の所に居た方が美味しい思いが出来る。
と言う下心って言うのも実際には絶対に外せないと思うけど。

後半はクヌートが考えるこれからの政治…と言うか。
その為にどうやって税金を得るかを算段する、そんなシーンだった。
で、それに巻き込まれたのは誰であろう、トルフィンの今の主、ケティル。
なんか変な所でクヌートとトルフィンが繋がったなーって感じだったけど。
ある意味じゃこれはこうなる運命だったのかもしれないなーって気もする。

ただ、ケティルの子であり、クヌートの従士であるトールギル。
なんていうか無骨なのに意外とキレて、クヌートの企みを看破してたのが面白い。
もしかしたらただ、そうした方が強い相手と戦える…みたいな。
そういう強いものと戦う、みたいな考え方だっただけなのかもしれないけど。
なんかケティルやオルマルと違って、随分と武も知もありそうな感じだったな。

で、そのせいでクヌートがケティルの農場に直接来る事になったけど。
という事はつまり、その農場の奴隷であるトルフィンと邂逅する…と言う事だよな。
しかも今回は敵…王であるクヌートと、それに楯突いた農場の奴隷という立場で。
そうした時にクヌートが、トルフィンがどう動くのか…次回が非常に楽しみな感じに。
どういった顔でお互いが顔を合わせる事になるのか、今から本当に楽しみという事で。

というわけで今回も面白かったです。
なんか農場奴隷編というか、畑作業をしてるのを見てるのも面白かったけど。
やっぱりもっと大きく、色んな部分が動いていくのを見るのは面白いよね。
ただ、その結果がどう動いていくのか…と言うのは想像もつかないし。
クヌートやトルフィンが今後どうなるのかと言うのが予想もつかない。
そういう意味で非常に先が気になる、そんな巻だったなーという事で。
色々と複雑なのに、細かい所がしっかりしてるとやっぱり面白いね。

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