と言う訳で細田さんの2作目、おおかみこどもの雨と雪。
公開から大分時間は経ってるんですが、サマウォ見てこれは2作目も見よう!
って思ったので見に行って来ました…本当は先週見る予定だったんですけど!
一緒に行く予定だった奴がずっと寝てたので…今週に回ったという方向。
話の内容は、狼…人狼かな? と、大学生の花の恋物語。
ふとしたきっかけで出会った狼と花が恋に落ちて、子供が出来る所からでした。
一人目は女の子の雪、二人目は男の子の雨…慎ましいながらも幸せな家族。
ちょっと違う事は夫が狼の末裔で、子供にもその耳と尻尾が受け継がれてた事。
それでも花にとっては最愛の夫、最愛の子供に変わりはなく、人間と同じ生活をして。
さあ、これからだ! っていう時に、夫が死んでしまう…。
その上子供は野生の血を引いていて、しょっちゅう狼に戻ってしまって。
都会では暮らしにくくなって、田舎の…自然の中で暮らそうと決意をする。
全体的にはそんな花の苦労日記って感じでした。
その事を、少し大きくなった雪(女の子の方ね)が語ってる感じで。
田舎に引っ越して、自然と格闘して、狼の血を引いてる事と向き合って…。
ま、一番大きく描かれてたテーマはその辺なんじゃないかな、と思います。
自然の中で狼として生きていくのか、それとも人間として社会に溶け込んでいくのか。
雪と雨、女の子と男の子二人を対比対称にして描いてた気がします。
後はサマー・ウォーズの時と同じく、田舎の情景や風景。
勿論リアルにあるのかどうか、と言う事はこの場合あんまり関係ないんですが。
想像した上での田舎、自然と言うのがしっかり描かれてたんじゃないかな、と。
村社会、助け合って生きていくというルール…それは人間にも、動物にも共通する事で。
そういう部分って言うのも、田舎や自然を題材にする事で描いてた感じはしますね。
なんだろうなー、本当にそんな暮らしが出来るのかどうかってのは判らないんだけど。
空き家を借りて住めるようにして、開墾して畑を作って野菜を育てて…。
そういう一通りの、秘密基地を作るような流れと言えば良いのかな。
そういうが伝わって来たのは非常に良かったんじゃないかと思いますよ。
ぶっちゃけ他所で評価されてるように、それがリアルなのかどうか。
そんなのは個人的にはどうでも良い事なんじゃないかと思って見てましたしね。
と言うのも、そもそもが田舎の情景風景なんてその人個人のものなわけで。
他人にどうこう言われて描く様なものではないと思うんですよね…想像上と言うか。
リアルを描いてるわけではないんだから、想像上の田舎で良いんですよ。
田舎、自然、こういうキーワードで思いつくような、そういう情景風景。
それを描くのが、監督の仕事であって、リアルを追及することではないんですよね。
現にこの作品を見た俺は、花が頑張って秘密基地を作り上げるような感覚。
それに対してなんとなく良いなぁ…と思ったわけで、それで十分なんだと思います。
だから本当の田舎なんて描く必要がないし、それを他人がリアルじゃないと評価する。
それってなんか違うんじゃないかなー…って言うのが、この作品における自然の描き方。
それを見た俺の感想ですね…ちょっと話がズレましたけど。
で、そんな自然の中で奮闘する花って言うのも一つのテーマですね。
都会から来たよそ者…しかも狼の子供を隠しての生活。
そういった異端者が、その土地で暮らす人たちに受け入れられるかどうか。
最初はただ隠して、自分もその土地の人間と関わらないことを選ぶ花だけど。
韮崎の爺さんに出会って、田舎には田舎のルール…助け合いがあると知って。
それを一つずつ、おぼろげながらやって行こうって思う強い心って言うのかな。
勿論それは子供の為、子供を育てる為って言うのが大きいと思うんですが。
結果的にはそういう田舎の助け合い…相互互助を描いてたんじゃないかなと。
実際韮崎の爺さんが悪態をつきながら畑の事を教えてくれたり。
段々周りのおっさん達やおばさんが花に対して心を開いて接し始めたり。
それって言い方は悪いけど、やっぱり花の実直さ、愚直さ…笑顔があったからで。
そういう意味で花の頑張りって言うのがきちんと報われてるのが非常に良かったです。
最初は失敗して、次も失敗して…誰にも頼れないと思ってた自然との戦いで。
韮崎の爺さんが最初の一歩を手助けしたシーン、あそこは名シーンだと思いますよ。
ぶっきらぼうだけど…頑張ってる奴に対して、それをバカにするなんて事はない。
韮崎の爺さんはそういうキャラクターだったのが凄く良かったんじゃないかな。
後大きく描かれてたのはやっぱり、雪と雨の対比ですかね。
小学生に上がった頃は雪がおてんばで自然と生きて行きそうで。
雨は身体も弱くてあまりそういう環境に適当できなさそうなんだけど。
徐々に上がっていくに連れて、雪は女の子らしく、そして人間らしくなって。
逆に雨は狐の先生と出会うことで少しずつ自然を身につけていって…。
その結果、雪は人間として人間界で生きる事を決め、
雨は花や雪を置いて、自然界で狼として生きる事を選んだ…。
この対比がこの作品の中で一番大きく描かれてたんじゃないかな、と。
それはどっちもがきちんとした道で。
ある意味では、自然界と人間界を対比したような演出なんだと思うけど…。
実際には雪が人と生きていく事を選んで、草太に狼である事を告げた事。
雨が自然を守る為に、狐先生の代わりを勤めて花や雪を置いていく事。
どちらも二人にとってはこれ以上ないぐらい大事な選択だったんだろうなぁ、と。
でも、どちらにも父親であるあの人と、母親である花と…その面影があって。
どっちの道を選んでも、その二人の子供である事は変わらない…。
そういう切ないけど、子供が自分の道を歩み始める事の大きさと言うか。
それと母親にとってはいつまででも子供は子供だって言う部分かな…。
勿論子供はいつまでも子供じゃない、それは花も判ってるんだろうけど。
特に特殊な環境だからこそ、って言うのが強く描かれてたと思う。
特に雪の、草太の件は印象深いね。
父親である狼が、花に自分の出自を告げたのと同じだからね、あれ。
勿論歳も違えば性別も違うけど…惹かれた事ってのはやっぱ同じで。
草太はそれを受け止められるだけの人間だった…って所も同じだもんね。
狼である事を受け入れて、愛し合った結果二人が生まれて今がある様に。
この二人もまた、次の世代を紡いで行くんだろうな…という事が判る。
そういうシーンだったから、窓際のカーテン越しの所は印象深い。
逆に雨の場合は最後花を振り切って山へ帰った所かな。
本当は雨だって花といつまでも一緒に居たいには決まってる。
だからこそ最後の声も交わさずに山に帰ったんじゃないかな、と…。
吼える事で、自分は大丈夫だ、やっていけるって言う事を告げる。
弱かった子供が強く立派に成長する、そういう事の象徴がある意味雨なんだよな。
と言う訳で、個人的には非常に面白い…と言って良いのか判らんけど。
全体的に面白い作品だったなと思うし、そういう意味で見て損はなかったな、と。
なんだろう、逆に自然がテーマだとか人間がどうだとか…。
そういう難しい事を考える必要ってのは無かったんじゃないかとは思う。
ただ花の頑張りと、雪と雨の成長…それから自然と人間の間と言うか。
そういうものを感じて、見ていけばいいんじゃないかなって感じでした。
後思ったより声に違和感はなかったかな、と。
花役の宮崎あおいさんも、雪役のお二人、雨役のお二人。
皆きちんと、それぞれのキャラクターを演じてたんじゃないかなぁ。
確かに声優さんを使ってないからこそジブリの匂いがする部分と言うか。
そういうのはあるんじゃないかな…ってのは見てて(聞いてて)思いましたが。
ちなみに草太の母親役で出てきた林原さんは一瞬で判りましたwww
ジブリにも林原さんだけキャスティングされてる事が結構あったし…。
ある意味では意識してキャストしてたりするんですかね…この辺は…。
それに加えて雪が中々良かったです。
最初は雨に対して、自然をもっと感じるように諭したりしてるのに。
徐々に女の子らしさに目覚めていく所とか、なんか可愛かったですよ。
後雨が段々と父親に似ていくのも良かったかなーと思ってます。
花は最初から最後まで可愛い…。
まあ、恋の始まりは唐突過ぎでしたがw
ただまあ、実際に考えると突っ込みどころって結構あったと思うんですよね。
リアルに考えた時、それは…って言うような部分と言えば良いのかな。
それに父親の狼がなぜ死んだのかとかも明言はされてなかったし…。
幾らなんでも大学出て直ぐ(ぐらい)の女が二人を田舎で育てる、とかね。
でもそういうのってこういう作品で突っ込むの、あまりにヤボだと思うし。
ある意味じゃオミットされててもいい部分って感じもするんですよね、個人的には。
父親の狼が死んだ事も、雪か花が語ってた様に解釈しても良いと思うし。
そういう狩猟本能が、雨に受け継がれてるからこそ雨は自然に帰ったのかもしれない。
何ていうかそういうのって、ある種見てる側が想像するからこそ面白いんだと思うし、
無理矢理リアルにこじつけなくても良いんじゃないかな、って気がしますけどね。
ま、ある意味これも家族愛がテーマなんですかね。
正直展開はちょくちょく読める部分ってのもあったのは確かです。
でも、それを丁寧に描くからこそ一つの作品足りうるのでは、と思うので。
家族愛や自然…人間と狼、みたいな事をきちんと描いてる作品だったな。
って言うのを見た後思ったし、それで良いんじゃないかなーと思います。
でも簡単に説明するとしたら、シングルマザー子育て奮闘記ですかねw
愛した人も、子供も色々特殊だったけど…。
という事で個人的には全然視聴しても損は無い作品だったんじゃないかと思います。
サマー・ウォーズは繋がりってのが強く描かれてた作品だったと思いますが、
この作品もある意味ではそれが作中に描かれてたんじゃないかな、と。
まあ、そんな事考えなくても見てて面白い作品だったと思いますけどね。