・ラプラスの魔女 著:東野 圭吾
東野圭吾さんの書き下ろし長編。
叔母が読み終わったのでと言ってくれたので久しぶりに長めの作品を読みました。
最近ちょっとご無沙汰だったのもあって読むのにどのぐらい時間かかるだろうか。
とか思ってましたが、そんな心配は杞憂でした。
と言うわけで東野さんの長編でラプラスの魔女。
先に簡単な感想を書いておきますが、個人的にはかなり面白くて良かったです。
ただどちらかと言えばエンタメ寄りで、加えてSF寄りと言うイメージだったので、
もっとドラマやミステリー(的)な切り口の作品傾向が好きな人だと、
少し、ん? ってなるかもしれないのかなーとは読みながら思いました。
未来的な理化工学的な要素が多いんですが、その分言ってみれば奇跡に近いと言うか。
まあ、奇跡とは違いますが、現代において出来る事ではない事柄が多くて。
そう言った部分を一つのギミックと言うか、それ自体をそれとして捉える事が出来れば、
非常に面白い作品だったんじゃないかな、と言うのが読み終わった感想です。
で、近未来理科工学的、と書きましたが…。
要するにこの作品における最重要人物である2人が大分超人的な感じなんですね。
まさにそこがこの作品のキモでもあるし、そうでなきゃ成り立たないんですが、
例えば見ただけでサイコロが振ったときの数字を予測できる、xx分後の天気を当てる…。
と言った超人的ない、わゆる未来予測を人の脳で行ってしまえる事が前提なので、
その前提を踏まえたうえで話を読んで行かないとダメ、と言う感じなんですね。
特に犯行に使われる今回のトリック…。
まあトリックと呼んで良いのかこの場合はちょっと良く判らないんですが、
硫化水素を地形や風の向き、未来の風速を”予測”してピンポイントな場所に誘導し溜める。
だからその硫化水素で死んだ人はあくまでも他殺ではなく、自然災害における事故死に見える…。
と言うのは、屋外ならつまり天候や風速風向き、その地形などを含めて完璧に予想せねばならず、
現代だとコンピュータを使ってなお完璧には行かない手口なんですね。
なのでその”予測”が可能な人間が居る、と言う事を前提とするので、
少しSF寄りと言うか、そんな感じだったなーと言う感想としました。
まあ有り体に言えばその辺の部分はラノベに近いものがありますね。
脳細胞脳神経脳科学を分野とする医者が、脳をやられた子を脳を弄って手術で救った。
そうしたらその子は超人的な未来予測が可能が可能になった…と言う所からなので、
こう言う設定に関していえばどちらかと言えばラノベに多いと言う気はしますよね。
ただ、別にそれが悪いのかとかそう言う事ではなく、一つの事象として。
作品を彩るものとして読み進められるならば特に違和感はないとは思いますけどね。
まーでも最初読み始めた時、竜巻で母親をなくした女の子の話からスタートして。
途中で硫化水素による殺人(事故死)がうんぬん…ってなり始めたとき、
どっからどういう風にそれが繋がるんだ…? とは思って読んでましたけどね!
読み進めたらなるほど、硫化水素を誘導する未来予測、竜巻と言う自然災害と言う乱流。
それらが一つ一つ結びついて行く所は面白かったです。
後、そう言った分野の話はどちらかと言えば好きなジャンルなので、
そう言う意味でも面白かった(ナビエストークスとか)のはあります。
まあ、読んでるだけで実際にそう言うものに触れた事があるわけではないですけど!
後途中から青江教授視点で読んでた気がします。
何でなのか良く判らないんですが…青江教授が関わってるのにそれ以上関わるなといわれたり。
円華に割と無碍にされてるのは読んでてなんか悔しくて青江教授頑張って欲しいよなぁ。
みたいな感じになっちゃってましたね…最終的に最後まで関われた一人ではあるんですが。
出来ればもう一人の刑事も事件の真相まで一緒に辿り着いて欲しかったかなと思うんですが、
それ自体は本筋には関係ないのでオミットしておいても特に問題はないのは確かです。
とにかくそう言う風な科学的な事象を描く面と。
もっと古代的と言うか…人間同士の歪さ、みたいなものを描く面が同時にあって。
特に今回の事件の発端となった最初の部分は一般的な人間味がない部分がありました。
自分の家族が完璧ではないから再生の為に殺すと言う、甘粕才生のその感性。
たまたま生き残った謙人がその理由を聞いて知ってしまったら、
例え超人離れした能力があろうがなかろうが復讐したいと思っても仕方ないよなぁ、と。
逆に謙人の動機に関しては人間味しかないと言うか…その辺の対比と言うのもあるのかな。
これ多分謙人が普通の子だったとしたらもっとドロドロとした殺し合いになるんでしょうしね。
そうではなかったので、こんな風にややこしいねじれ方をしてしまって。
そこに円華や羽原、青江教授が巻き込まれていったと言うか。
と言うわけで読み始めてから一気に読み終わりまで行ってしまいました。
キャラクターも結構良くて、円華とその監視役の2人なんかは濃くて良かったです。
青江教授もなんかこう弱弱しいような感じなのに結構頑張ってたりとかしてて。
一回の作品で終わらせるには勿体無いぐらい印象に残ったキャラが多かったですね。
ちなみにラプラスの悪魔と言う単語が出て来ますが(魔女も同義で)。
自分がこの単語を知ったのはGS美神ですね…何巻だったかちょっと忘れましたが。
結構後半だったと思いますが、依頼されてラプラスの悪魔に合いに行く。
と言う話でラプラスの悪魔と言うものを知った記憶があります、漫画で申し訳ないですが!
最初にラプラスに会ったときに、お隣さん、って声をかけられるんですが、
何のことか判らずに依頼をこなそうとして、依頼の途中でいつものドラバタが始まって。
結果法王様をドツいて、その罪でラプラスの悪魔の隣の牢獄に2人が入れられる、みたいな。
そんな話…つまり美神を見た瞬間に今後の展開がどうなるかが判っててお隣さん、と声をかけた。
と言う予測(未来予知)を描いてたものですが、結構面白いエピソードでしたね。
と、話が逸れましたが。
結構分厚い割りにさくさく読めるし、面白かったので良かったです。
未来予測が云々とか小難しいように聞こえますが、読み進めてれば気にならないので。
小難しいのはちょっとな…と言うのは気にせずに読んでみるのが良いかもしれません。
全体的に面白かったのでお勧めしたい一冊かなと言う感じですね。